病気を防ぐ医者になりたいーー佐藤和子先生インタビュー 1986年2月14日千里タイムズ

病気を防ぐ医者でありたい    千里タイムズ 昭和61年2月14日

ーー去年心臓発作で循環器病センターに入院した方から、麻酔科の佐藤先生にぜひ会って見るようにと勧められて参りました。先生のお仕事はーー

「手術中、患者さんの身体の状態を終始確認しながら、薬を投与したりしてベストを保つよう監視していくのが麻酔科医の仕事です。執刀される外科の先生を助ける地味な役割ですが、緊張と根気が必要な上、微妙な変化も見逃さない細やかな心配りが要求される責任の重い仕事です。今までに24時間を超える手術も4回ほど経験しました」

 

ーーどうしてお医者さんになられたのですかーー

「子供の時に父が、悔いのない人生を生きたいならば第一に健康に関する道、第二に教育に関する道、第三に政治に関する道のどれかに進めばよかろうと話していました。それで私は、困っている人を見ると何かせずに居れない方なので医者への道を選んだのです。神戸大学で麻酔学の岩井誠三先生に、全人格的に患者と付き合う医者の基本を叩き込まれたのが今日までの私の支えになっております。国立こども病院で子供から出発し、県立尼崎病院で心臓麻酔に専念、縁あって当時国立循環器病センターの病院長だった曲直部寿夫先生に招いていただいて昭和54年にこちらに参りました」

 

ーーその先生が専門とは別に栄養学に関心を持ち、大変な熱意で研究会を推進されていると伺いましたがーー

「一番動機になったのは、国立子供病院にいた頃に、手術では成功したのに予後に感染症にかかって死亡した子供があった時のショックです。科学の枠を尽くしても、エネルギーの供給源である食事の大切さを見落としては何もなりません。正しい栄養の補給は病気の回復を早めるだけでなく、病気を予防する1番の方法だと痛感して、京大医化学教室で数年、栄養学の勉強に打ち込みました。そして再び病院勤めをしながら様々な病気で手術を受ける患者さんと接する度に、予防医学の必要性と食事の大切さへの思いを募らせてきました。こんな時、一株の苗から一万二千個のトマトを収穫したハイポニカ科学農法の野澤重雄さんの話に出会ったのです。去年つくばの科学万博にも出展されて話題になりましたが、同じ植物でも、適切な栄養と光を与えて理想的な環境に置けば、驚異的な生命力を発揮するということは、人間の場合も同じではないだろうか。ただ考えているだけでは力にならないからと、昨年職場で同じ考えを持つ人たちに呼びかけて『健康を育てる会』をはじめました。循環器病センターの向かいにある吹田調剤薬局の古川局長さんが趣旨に共鳴して会場を無償で提供してくださり、今までに5回ほど、女子栄養大学の香川綾学長編集の食品成分表やガイドブックをテストにして勉強を重ねました。その中でわかったことは現代の病気はストレスを回避するための食べ過ぎから来るのが多いこと、5歳未満の子供の20%が既に成人病予備軍の体質になってしまっていることなど、未来への不安をかきたてることばかりでした。市販食品はカロリー高すぎてビタミンの不足が著しく、外食や市販品に頼る傾向が強い現代人の身体は病気の温床そのものになりかねない状態です。今こそ食事を担当する大人が、しっかりと栄養について勉強し、身体のもとになる食事について手間と時間をかけなければいけないのです。」

 

ーー正しい食事をとり、生命力を最良の状態で燃焼させるように私たちはもっと意識的に努力しなければ…ーー

「人間の体は血液が1日50ccずつ作り変えられていて、全血液はやく3ヶ月で入れ替わります。一番遅い骨でも2年で入れ替わるのですが、全て、体のもとは食べ物ですからね。病気になってから病院へ通ったり順番を待ったりするよりは、良い食事をして健康でいる方がずっといいでしょう。」

 

ーー先生は本当に生き生きとしてられますねーー

「毎朝しっかりと食事をしてきますので、一昼夜徹夜の手術があっても頑張れます。私は「一期一会」という言葉が好きで、縁あって関わった患者さんには、知っている限りのことをお話しして、健康のお手伝いをさせてもらっています。健康はあくまでも手段で、元気に、それぞれの人が人生の目的を達成されるように手助けする“大医”になることが私の目標なのです。

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